ES(従業員満足)向上と離職率低下を目指して ある介護施設の取り組み

こんにちは、エルバスです。

僕は現在、ある介護施設の人事責任者をしております。

入職当初常に抱いていた思いがありました。

なぜ人が定着しないのか、なぜこんなにも離職率が高いのか、毎月毎月なぜこんなにもシフト作成が大変なのか。
以前勤めていたアパレル業界も同じく離職率が高い業界であり、当時はこの業界以上に人が安定しない業界はないと思っていました。
しかしそんな業界に身を置いていた私でも、介護業界の人の離職率の高さには驚きました。
まるですべての職員が契約社員のように月ごとに変化していく。
そんな状況でこの施設に未来はあるのかととても不安に感じました。

介護業界全体の離職率は17%程度
(公益財団法人 介護労働安定センター 平成28年度「介護労働実態調査」より)
に対し、当施設の28年度の離職率はなんと“26%”を記録していました。

これは異常事態です。
早急に手を打たなければ、施設の未来はありません。
そこで私が離職率低下を目指し手を付けたのが”ESの向上”でした。

本日はESの向上に向けて当施設が行った取り組みについてご紹介します。

問題はどこか

問題解決に向けて取り組む前に、まず何が一番の問題なのかを把握する必要がありました。
その答えは明白でした。
何よりの問題は“運営責任者(現場責任者含む)たちが自施設の状況(離職率)を把握していなかった”こと。
ここまで危機的状況にも関わらず、それが問題であるとも思っていなかったのです。
その原因としては、採用率が離職率と同程度の26%程保っており(幸いにも)、入れ替わりはあるものの肌感覚で人手不足を実感していなかったからです。
そのため、また入ってくるだろうという安易な考えから、誰しもが“去る者は追わず“という考えが染みついてしまっていました。
採用率が保てている”今”はいいかもしれません。
が、世間で介護業界の人手不足がこれだけ騒がれている中で今後も安定的に人が入ってくるはずがありません。

入れ替わりが激しいので”またか”というあきらめもあったかもしれません。
職員から「辞めます」と声が上がっても理由を聞くことも、引き止める事もしていませんでした。
今いる職員を守らずして今後はありません。
例え引き止められなかったとしても、辞めていく人間からその真意を聞きださなければ、次に活かすことも出来ません。
“失敗から学べ”です。

次に行うべきは、皆の【意識改革】でした。

ES(従業員満足)なくしてCS(顧客満足)なし

そして次の段階として皆に理解してもらったのは、ESとCSの関係です。
CSは介護を含むサービス関連の仕事に従事してきた方であれば聞きなれた言葉だと思います。
しかしESの存在はあまり知られていません。
実際に当施設においてもESを知っている従業員は僅かでした。

働き方が多様化している現在、労働集約型産業において人手不足は避けられない事態になっています。
とりわけ介護業界では、人を扱う仕事なので神経も体力も消耗する過酷な労働環境です。
また人間関係や将来への不安など様々な問題が絡み合い、離職率が非常に高い傾向にあります。
従業員のコンディションやモチベーションが低下している中で、いくら運営側が「サービスの質を上げろ」「顧客満足を目指せ」などと声高にCSの必要性を訴えても、そこで働く従業員のストレスを取り除かなければその号令は誰にも届きません。
CSを上げる為にはまずESの向上が必要です。

実際に現場でサービスを提供している従業員が満足していなければ、顧客に真の満足を与えることはできないからです。
自分のモチベーションが下がっているときに相手のモチベーションを上げろと言われても、それは難しいですよね。

では従業員にとっての満足とは何なのでしょうか。
それは人によって異なってくるはずです。
従業員Aにとっては「給料」が重要なポイントかもしれませんし、従業員Bにとっては、「仕事のやりがい」といった自分の理想の仕事が出来ているかどうかの比重が高いかもしれません。
その他従業員C・D・E・Fに聞けば「施設理念に共感している」「人間関係がよい」「時間に融通か聞く」「通勤が楽」など様々な満足があるはずです。
このようにESを高めるポイントは、個々の従業員によって異なります。
一方で従業員の満足を決める要素が満たされないと、仕事へのモチベーションが下がり、最悪の場合退職に繋がります。
必要な事は自社で働く従業員が何をモチベーションにして働いているのか把握することです。

では把握するにはどうすれば良いでしょうか。

ヒト・モノ・ウツワ

ちょっと遠回りしますが、介護業界とアパレル業界は共通点が多い業界だと思っています。
これまで僕はアパレル営業として全国の店舗スタッフと関わってきました。
1店舗につき5・6名のスタッフがおり、20店舗ほど担当しておりましたので、常に100名近くのスタッフと日々接していました。
当然ですがスタッフそれぞれが異なる考え方・能力・バッググラウンド・プライベートでの悩みなどを持っていますので、どうしても対立やいざこざが起こります。
店舗スタッフの場合、営業時間という拘束があるので嫌なスタッフがいようが、悩みを抱えていようが日々売場に立ち、お客様と笑顔で接することが求められます。
ストレスを発散する場がなく日々消耗し、退職していくスタッフを多く見てきました。
入れ替わりの激しいアパレル業界において、人材確保は非常に需要なファクターです。
当然ながら売場のスタッフがいないと店舗は成り立たないからです。

現場での対立や問題は離職だけの問題に止まらず、経営にも影響を及ぼします。
店舗環境が良くないと、チームワークが乱れ、その空気感がお客様にも伝わり、入店すらなくなる店舗へと変わります。
一方チームワークが良く職場環境が良い店舗は、それぞれが自分の役割を把握し、助け合うことで職場に活気が生まれ、自然と入店客数が増え、安定的な売上を作ることが出来ます。
このように内部の混乱を放置し過ぎると単に離職率が高いという問題だけではなく、利益を失い会社の経営問題にまで発展します。

アパレル業界はヒト(店舗スタッフ)・モノ(商品)・ウツワ(店舗)の三要素で成り立っています。
Eコマースが台頭してきた現在、店舗で商品を購入するお客様は、商品価値(モノ)だけではなく、接客の質(ヒト)や店舗環境(ウツワ)など付加価値を求めています。
どれか一つでも欠けてしまうと、わざわざ足を運んでお店で購入する意味がなくなるからです。
いくら良い商品(モノ)があってもそれを販売する(ヒト)がいなければ売れませんし、素晴らしい接客をするスタッフ(ヒト)がいても、店の見た目・雰囲気(ウツワ)が悪いとお店に入ってもらえません。
ヒト・モノ・ウツワすべて密接な関係で繋がっています。

これらの事は介護業界でも同じことが言えると思っています。
介護業界も利用者からお金をいただいている以上、アパレル業界と同じように良質なサービスを提供しなければなりません。
サービスの質(ヒト)や施設環境や居心地(ウツワ)求められるのは当然です。
サービスの質を上げるには働きやすいチームワークの良い職場作り、そしてそれぞれが自分の役割も把握して助け合える職場。
現場で働くスタッフの職場環境(ES)を良くすることで、必ず利用者やそのご家族にも良い雰囲気は伝わり、サービスの質が向上し、顧客満足に繋がります。
これによって施設価値が上がり、就職希望者・ご利用者共にこの施設を選んでいただける理由になります。

アパレルの場合はES向上の一環で”ヒト”を守るために”営業”が存在します。
店舗で起きている課題に対し、いち早く対応し問題を解決する事を求められます。
現場のトレーナーやエリアマネージャーと協力し、定期的に店舗スタッフとミーティングを行い、時にはスタッフと食事に行くなどして店舗情報を収集し、その情報を基に人事ミーティングを行い、見つかった課題に対して出来る限り早い解決策を打つ。
この取り組みをこの施設でも使えないかと思いました。

アパレルと同様に施設内で起きているスタッフ問題や情報を共有し、先手を打つ体制作り、そして問題が表面に出てしまったとしても柔軟に対応できる体制を作ることを決めました。

ES向上を目指して 人事MTG開始

まずは施設で働くスタッフが何を思い、何をモチベーションにして仕事をしているのかを把握するために人事ミーティング制度を立ち上げました。
個々のスタッフのコンディションを整え、職場への定着化を促進させる事が目的です。

採用率を上げ、人材を確保する事はもちろん必要ですが、まずは既存のスタッフの職場環境とコンディションの整備し、”人材の流出”を防ぐことが最優先です。
例え採用率を向上させても、基礎地盤が安定していなければ、せっかく採用した人材が定着することはありません。
ESの向上は目に見える事ではないので、まずは離職率低下を目標としました。
目指すは離職率10%です。
期間を設け、目標を設定しそれをクリアしていく。
そしてまた目標を立てクリアするサイクルを作っていく事にしました。

人事MTGの方法

優秀な人材のリテンションのためには、やりがいのある仕事を与えること・そして自分が見られている=評価されているということが最もよい動機づけが必要だと思っています。
そのためにまず、スタッフのコンディションを各部署のマネージャーが責任を持って把握し、情報を共有する。
共有した情報をもとに採用・人員配置・トレーニング・コーチングなど必要なアクションを起こし、今後の入退職の情報も共有し、適切な人員体制・配置を早くから組み立てていくシステムを構築しました。

流れをまとめると、

1. 人員過不足・人員配置の確認(不足がある場合、人員体制はどうするのかなど検討)
2. 各部門スタッフのコンディション共有→人事表を基に検討 ※些細なことでも共有し、スタッフの人間性を知る。
以下MTGから次回のMTG間でPDCAのサイクルで回す
3. コンディションが悪い・育てたいスタッフ等の確認と共有
何を行うか計画(Plan)
① Why 何のためにやるのか
② How どうやって実現するのか
③ Who  誰がやるのか
④ What 何をするのか・何ができるのか
⑤ When いつやるか(期間・時期)
⑥ Where どこでやるか
1. 次回のMTGまでに行動(Do)
2. 次のMTGで報告→評価(Check)&改善(Act)
3. 再び計画(Plan)→行動(Do)→評価(Check)→改善(Act)

4. 構成メンバー
参加メンバ-
人事総務責任者
看護責任者
介護責任者
状況確認を看介護の責任者が行い、その情報をもとに人事総務が動くという体制にしました。

ここで重要な事は人事ミーティングで共有した情報は絶対に外部に漏らさない事です。
なぜならば、共有される情報の中にはとてもセンシティブなプライベートの事や、まだ推測に過ぎない事や予定などの情報が入っているからです

特性の見極め・労働時間の把握

またマネージャークラスには以下の2つを徹底して見極める事を依頼しました。

1. 特性の見極め

業務指導は当然のことですが、自分が管理するスタッフの特性(得手・不得手など)を把握し、適材適所の配置・適切な役割を与える事がマネージャークラスには求められます。
基本レベル底上げは当然必要ですが、全スタッフが同レベルのハイパフォーマンスを行うことは現実的に不可能です。
人にはそれぞれ得手・不得手があるからです。
それぞれに適した仕事を与え、役割を明確にし、適材場所へ人員を配置し、効率よく仕事を回せるようにします。
ローパフォーマーと思われている人こそ、得意とすることを見抜き、それを伸ばすためのコーチングやトレーニングを行う。
適した役割を与えることで、ある特定の分野において最高のパフォーマンスを見せるかもしれません。
また、離職率を下げる有効手段の一つに”憧れの存在”を作ることだと思っています。
同じ施設内で憧れの存在をつくり、働き方・給与・プライベートも含め、何年後に自分はこうなっていたいと目標を持って仕事することで、日々淡々と過ごすのではなく、常に目的意識を持ち、モチベーション高く働くことが出来るようになります。
逆を返せば憧れられる存在がいないと、将来の自分の立ち位置に幻滅し、将来性を見いだせなくなり、退職につながる可能性が出てきます。
コンディションを整えることはもちろんの事、そういった人材を育てる制度作りも人事MTGの目的の一つとしました。

2. 労働時間の把握

今後長時間労働に対する法規制が厳しくなってきます。
所属長が部下の労働時間を把握し、過剰労働を減らしていく為に、業務の棚卸が必要になります。
なくせないか?まとめられないか?順序を変更できないか?省略できないか?ECRSの意識を持って仕事を見直す必要があります。
まずは定期的な人事MTGの中で、全スタッフの労働時間数を確認し、人によって労働時間に偏りがないかを共有し、偏りがある場合原因を追究し、改善できないかを検討していく事にしました。

まとめ

前もって人員のコンディションを把握し、人が抜けたときにどうするのかの対策を考えて
おく必要がある。様々な問題ケースに対する対策を練る。
そのためには、それぞれの責任者が日ごろからスタッフの状況を観察し、その情報を共有する場が必要です。
現場・人事がより密接に情報を共有し問題が起きたとしても対処できる状況を作っておく。また日ごろから問題を明確にし、対策を打っておく。
各部署が連携し、スピーディーに効率良く動く。

この取り組みにより、ひとまず29年度は離職率17%と全国平均並みに下げることが出来ました。
何より嬉しい事は現場スタッフが働く中で”笑顔”が生まれた事です。
それまでは淡々と仕事を行いまるで作業のようでしたが、それぞれが声を掛け合って、施設を良くしていこうと前向きに「こうしたらどうか」「こんな取り組みをやってみたい」と声を出してくれるようになったことです。
まだまだやることは多いですが、ひとまず施設がポジティブに動き出したことに安堵しています。
これからも施設の対策や状況をお伝えしていければと思います。
それではまた

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こんにちは。 エルバスです。 今までアパレル業界を長年身を置き、時間を優先するため全く異なる業種転職しました。 そこで生まれた時間を使い、興味あることに色々チャレンジしています。 このブログでは、今までの経験と今チャレンジしている事の実体験をもとにしたストーリーをご紹介できればと思っています。 クラウドソーシングのことブログのことファッションのことガーデニングのこと料理のことなど様々な情報をお届けします。